青字:生徒(勝爺)
茶字:先生(青村豆十郎)
2-2の課題
1,配付資料のオノマトペリストを用い、寄物陳思で「恋」の狂歌を詠む。
2,寄物陳思で「祝賀」の狂歌を詠む。
(k-36)あつあつの鍋を囲みて相談す熱海がいいかハワイがいいか
(青村豆十郎) オノマトペで「あつあつ」を選びました。これはたいへん良い選択でした。このオノマトペ選択が重要です。
この「熱々」というオノマトペは「温度の高い物」「非常に仲むつまじい様子」の二つにかかるので狂歌に仕立てやすいです。
しかし、作られた狂歌では「あつあつ」が鍋には掛かっているけれど相談しあっているカップルにはうまく掛かっていません。
両方の意味の熱々であるように工夫してみましょう。また、その為には「あつあつ」を要(第三句)にもってくると巧くはまる事が多いです。今回に限らず、最初に思い付く言葉、最も大切な要素などは三句目の五文字に入れるよう考えましょう。
私ですと「あつあつ」を使ってそれを「おでん」と「新婚」両方に作用させると次のように作れます。
二人して何にするかとあつあつのおでんはんぺん大根新婚
(k-37) うきうきと浮き見る先沈みたるこいなるやふななるや
オノマトペ「うきうき」から「浮き」へのつながりをつくるのが難しいですね。「鯉」と「恋」の掛詞で繋げようとした様子はわかりますが、狂歌として整っていません。
また、字余り、字足らずになっている事がよくあるようなので、作った狂歌は一度声に出してみてリズムがあっているかどうか確かめてください。
私がつくってみると次のような感じです。
イケメンに泳がされてる鯉ごころウキウキさせた餌に釣られる
2、 寄物陳思で「祝賀」の狂歌を詠む。
(k-38) 七輪でぷくぷく膨る焼き餅に今年の景気盛り上がるかも
課題2は寄物陳思であればオノマトペを使わなくても大丈夫です。
また、「祝賀」は「かも」などと弱気にならず断定調や命令調の方が良いです。理屈抜きで現実抜きで「めでたい」と言い切ってみ構わないのです。
七輪の上に置かれた餅のごと五輪の上で景気膨れよ
七輪で餅はぷくぷく宝船七福神で景気ふくふく
こんな感じになります。寄物陳思や「祝賀」は狂歌をつくる上で基本要素となりますので、今回の添削を踏まえつつ、もう一回同じ課題で挑戦してみましょう。
2-2の課題(2)
1,配付資料のオノマトペリストを用い、寄物陳思で「恋」の狂歌を詠む。
(k-39) 今朝の飯 アサリシンジメ 寒々と 納豆食いかず 佃煮よける
細かい事ですが、多くの場合結句は「四,三のリズムの用言止め」よりも「三,四のリズムで体言止め」の方が全体が引き締まり読後感が良いです。可能な場合は「よける佃煮」のように「三,四のリズム」「体言止め」に変えてみましょう。
今朝の飯 アサリシンジメ 寒々と 納豆食いかず よける佃煮
(k-40) ゆうげには こいのさしみに あつあつの しるわんそえて にいづまかがみ
「熱々の」をうまく掛ける為に「刺し身のこい(恋、鯉)に 熱々と 知る椀添えて」というような流れにした方が良いですね。また、初句も「夕餉には」ではなく敢えて「冷やし酒」など「熱々」の逆を持って来るなど、小技を覚えると良い作を生み出しやすいです。
冷やし酒 こいのさしみに あつあつの しるわんそえて にいづまかがみ
2、 寄物陳思で「祝賀」の狂歌を詠む。
(k-41) はつひので うみはなるるは あみやきの もちににたりと いう子かわいい
とても微笑ましい情景ですね。直接、祝賀している語句がありませんが「初日の出」や「餅」はそれだけで目出度いので良しとしましょう。骨子となる語句は「初日の出」か「餅」ですのでそれを要(三句目の五字)か結句(五句目の七字)に入れると「姿」が更に良くなります。
網焼きの餅に似たりと我が子言う海に輝く初日の出見て