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無心所着、掛詞、縁語

青字:生徒(勝爺)
茶字:先生(青村豆十郎)

1-4の課題

1,無心所着の数字語呂合わせ狂歌を二、三首つくってください。
つくった狂歌は下記のように数字で書いた物と中身を書いた物を並記してください。

「1582家飛び出せば710を頭に浴びた5123を書く」
(十五夜に家飛び出せば納豆を頭に浴びた恋文を書く)
2,掛詞、縁語を共に用いた歌を一首つくってください。(内容は自由です。和歌でも狂歌でもかまいません。)1-3の再提出でもOKです。

1,無心所着の数字語呂合わせ狂歌

(k-13)(「451079 042474 103だ 04ン 4040 73だか0

仕事なくわしに用なし倒産だマシンよれよれ涙涸れ

(青村豆十郎) この句はうまく詠めていますが、最後が五字となっているので「涙涸れたり」「涙涸れつつ(22)」「涙涸れてく(109)」「なみだにくれて(73だ29010)」などと変えると良いでしょう。

「言葉」→「数字」で考えていらっしゃるようですが、今回のポイントは「数字」→「言葉」です。語呂合わせしやすい言葉を探して数字への置き換えをするのではなく、電話番号や車のナンバーで語呂合わせを作るような要領で、予め決めたランダムな数字列を言葉に起こす練習をしてください。
少し後の単元になりますが、「言葉」→「数字」で考えて狂歌を仕立てる場合もあります。
またそうした場合にはアラビア数字から漢数字に変えて詠むことが多くなります。十、百、千、万などの字も多く使います。「仕事無く」から始めますと、
四五十七九 四七四七十十 四八零二二 零二八七千 九九一二千
(仕事無く用無しなどと呼ばれつつ ゼロにはなせん個々の食い扶持)
のような作品ができますね。

(k-14)「073り3075410557がら042 2 56寝隙間風29
女去り未練ないよといいながら和室にごろ寝隙間風ふく

こちらは問題無いようです。本来、無心所着ですから内容や流れなどは関係ない(評価の対象では無い)のです。

今回の課題が持っていた裏の目的。今回はなにを見ているかというと、一つは「言葉の組み立て力」(ただ、これは「数字」→「言葉」での結果を見ていくものなので今はよく分かりません)
もう一つその人に事前に内容に関わる条件や誘導を与えず狂歌を作ってもらったとき、どんな内容の歌を詠んでくるか。その人の作りがちな歌、傾向を知ることです。
言われてハッと気が付いたかもしれませんが、そう井上さんの場合は内容が暗め。ネガティブな歌が多く、自嘲的な傾向があると言えます。
これは一概に悪いことではありません。悲哀から笑いを引き出すのは「ペーソスの笑い」などと言い、川柳やもう少し長めの文芸では最重要と言っても良い要素です。しかし、一般に狂歌では楽天的な笑い、暢気な思考が好まれるようです。
個々人の傾向が、今後の指導などによって変わっていくのかどうか、それは分かりません。(未だ私が長く多くの人を教えた経験を持っていないからです) しかし、狂歌はストレスを減らす作用がありますので、変わっていく可能性は高いです。
もし変わらないとしても、気に病むような事ではないでしょう。こうした素の傾向は技巧や御題によって打ち消されるものですし、ペーソスの笑いを必要とする狂歌もたくさんあります。自虐的な狂歌を好む狂歌師や読者も多く存在します。

2,掛詞、縁語を共に用いた歌 

(k-15)「しらじらと 明ける海から 白波と しらすとれたと 知らせの電話

これは掛詞というより頭韻の一種ですね。掛詞は同音異義語、同音の並びを利用し「二つの意味で重ね合わせて」用いる技巧です。もうひとつ、縁語は連想で繋がる語、同ジャンルで括られる言葉を多用することで全体の深みを増す技巧です。
また、どうせなら「しら」の頭韻で統一した方が良いでしょう。例えば「しらじらと白ぐ海から」などとしましょう。しかしそうなると韻の「しら」の殆どが「白」を主内容とするものになってしまいます。

「しらじら」を元に掛詞を用いて作例を示しますと
A, うちあける海はしらじらしき知らせ女心とあきのそら言 
のような感じになるでしょう。

また縁語では「白浪」に対して「寄せる」「くだけ」「風」などを用いて
B, 白浪が風ともないて打ち寄せる知らせの電話に砕けた心 
などのようになるでしょう。

ちなみにAはどちらかといえば狂歌、Bはどちらかといえば和歌です。

kyoka320-40


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