青字:生徒(勝爺)
茶字:先生(青村豆十郎)
4-4 狂の境地、「慈悲喜捨の精神」
課題1.狂の境地、「慈悲喜捨の精神」を意識しつつ、「猛暑」あるいは「梅雨」をテーマに狂歌を作ってください。
梅雨空を 眺めてひねる 俳句会 どちらも主役は アジサイばかり
<添削> 出来としては悪くないのですが、「狂の境地」「慈悲喜捨」というような見地からするとそれが足りません。一番大きな問題は「作歌時の視点が自分に留まっている」ことです。今回のような課題では、なるべく大きな視点、広い心を持って詠むことが必要です。
雨垂れに頭をひねり花々も 梅雨を御題に 句を案ずるや
こんな感じにして、何か自分以外のものにいったん「思いをはせて」作るのがコツです。
課題2.伊豆はかつてより人気の観光地であり、多くの歌がのこされているようですね 。この中の与謝野鉄幹・晶子の二首について、「本歌取」で狂歌をつくってください。なるべく狂歌技巧を織り込むようにしつつ「もじり」にならないよう注意してください。
・蛍舞う 天城の里に ひそやかな 幼き頃の 祖母の声聞く (大釜正明)
A 黄砂舞う 天城の里に ひそひそと 観光客の 中国語聞く
・初夏の天城おろしに 雲ふかれ みだれて影す伊豆の湖 (鉄幹)
B 初夏の あまりに恐ろし 蚊に刺され みだれて探す こぞの軟膏
・うぐひすが よきしののめの空に鳴き 吉田の池の碧水まさる (晶子)
C うぐいすが 起こす朝寝の さわがしさ よしてよまだし 眠気まされる
<添削> Aは出題外の作品を使ったものですが、このなかでは最もよく出来た作品です。状況がリアルで、面白味もある。そして、しっかりと本歌取になっています。また本歌の「幼き頃」と「たった今、現在」との対比も良いです。
B,Cはどちらかというともじりに近い構造ですし、本歌取としての良さが使えていません。
本歌取ともじりの区別をしっかりつけるため、使うフレーズを決め、少しその位置を変えて詠んでみると良いでしょう。また、時や場所などを本歌とは別な時、場所にする。対照的な事物を登場させるなどの工夫が出来ればさらに良いです。
狂歌として、更に「掛詞」や「諺利用」「エピソード型」などの技巧を追加できれば完璧です。
湖の水を鏡に吾を見れば 天城おろしにみだれ髪かな
東雲の空鳴き渡る鴬も 吉田の池の水を濁さず
こんな感じで仕上げることになるでしょう。
では次回の課題です。
課題4-5
「信濃なる千曲の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ」 この歌について調べ、現代語訳狂歌を仕立てましょう。